競走生活からの引退

競走馬が引退する時期については、種牡馬繁殖牝馬としての期待の大きさや健康状態、馬主の意向などさまざまな要因が作用する。
なお、現在の日本においては、競走生活を引退した後に種牡馬または繁殖牝馬として産駒を生み出した馬が、再び競走馬となることはできない(過去には、かなり昔のケースではあるがヒサトモや、オンワードゼアの様な例がある)。
競走生活を引退した馬のその後の用途としては、

種牡馬繁殖牝馬
■競馬場の誘導馬
馬術競技
■乗馬
■競走馬の育成や、農業系学科の教育機関(高校・大学)の実習などに従事する使役馬などの選択肢があり、この他単に馬主の飼い馬、生産牧場などで功労馬として飼われる場合もある。
また、乗馬の一部であるが、相馬野馬追(相馬市)の様な伝統的な馬事文化が存在する地域や草競馬が盛んな地域では、これに参加する事を目的とした個人に繋養される馬も少なからず見られるが、この多くも元競走馬である。

日本における競走馬登録抹消の主な理由は以下の通りである(2001年の統計)。
1位 時効 - 3991頭、
2位 乗馬等 - 2886頭
3位 繁殖 - 1319頭
1位の時効は地方競馬のみに存在するシステムであるが、これには大きく分けて2つの理由が存在する。
1.馬齢による出走制限(定年制度)
2.長期間の不出走による競走馬登録の自動抹消

1.の定年制度は南関東地区など一部の競馬場が定めているが、定年を迎えた馬であってもまだ競走で好勝負が可能と判断された馬の場合、競走馬登録を抹消せずにホッカイドウ競馬などの定年制度を定めていない地区に転籍して現役を継続する事が見られる。
2.の不出走によって自動抹消となるまでの期間は、競馬場毎に多少異なるが多くは2年程度である。
また、1年以上出走していない競走馬については、毎年4月と10月の2回、馬主などの関係者に出走継続の意思の有無について確認を行ない、出走意志がある場合は関係者が所定の手続きを行なう事になるが、この手続きによる意志表示が確認できなかった馬は時効による自動抹消の対象となる。
後2者はいわば再利用という形で第二の人生(馬生)を歩むことになるが、時効を迎え、もしくは充分な競走能力がないことが判明し、かつ引き取り手のいない馬の場合には、日本やフランス等馬食文化が存在し、馬を飼っておく場所が限られる国・地域においては、かなりの割合が食肉(動物飼料・加工用、一部人間用)として処分されることになる。
乗馬等の場合においても、皐月賞ハードバージのように使役馬として酷使された結果斃死した例もある。また、日本においては、名目上は乗馬や繁殖に用途が変更された馬も、馬の需給バランスから見て全てがその通りに用途変更されているとは考えにくく、その大部分はやはり屠殺されていると言われる。
軽種馬の統計上、用途変更に関する統計は存在するため競走用から乗用、使役用などに転用となる数は明らかだが、食肉用という分類が存在しない。
肥育用という分類は存在するが、肥育用馬の統計には馬の種類の区別がないため、競走馬が最終的にどれだけ食用になったかを示す統計は存在しない。
欧米においては馬に余生を安楽に過ごさせるための牧場が設置されているが、経済的問題や用地・人材確保の問題があるため、こういう場所で余生を送ることができる馬はごく一部にすぎない。
アメリカは国内での屠殺は馬の頭数を考えれば比較的少ないが(馬食文化が無いことや、馬肉の供給がしばし違法であるため)、実際にはアメリカ国外に移送してから屠殺されているという。
近年、アメリカでは屠殺及び屠殺目的の輸出を全面的に禁じようとする動きも見られる。

オスの競走馬(牡馬)について、競走時に興奮しやすい難点を抱え、これが競走能力を妨げていると判断された場合、気性を穏やかにし、能力を発揮しやすくする為に去勢がなされることがある。
この去勢された牡馬はせん馬(?馬)として区別される。
去勢によって能力が開花する馬も多く見られるが、一方で去勢によって繁殖能力を喪失する為、競走の主目的として優秀な繁殖馬の選定を謳っているクラシックなどの一部の重要な競走について、出走権が無いという制限がある。

競走馬(牡馬)の去勢

オスの競走馬(牡馬)について、競走時に興奮しやすい難点を抱え、これが競走能力を妨げていると判断された場合、気性を穏やかにし、能力を発揮しやすくする為に去勢がなされることがある。
この去勢された牡馬はせん馬(?馬)として区別される。
去勢によって能力が開花する馬も多く見られるが、一方で去勢によって繁殖能力を喪失する為、競走の主目的として優秀な繁殖馬の選定を謳っているクラシックなどの一部の重要な競走について、出走権が無いという制限がある。

日本においては2歳の春(4月〜7月頃)以降、競走に出走することとなる。
なお、出走に際してはゲート発走検査など、競走馬としての基本的な能力を確認する検査があり、事前にこれに合格した馬のみが出走可能となる。
逆に、驚異的な潜在能力の高さで話題になるほどの馬であっても、ゲートを嫌がるなどして発走検査を何度繰り返しても受からず、ついに競走馬としてデビューできなかったケースも存在する。
地方競馬の場合、新馬は『能力試験』、転入馬、休み明けの馬は『調教試験』として実際にレースと同様に走行して、問題なく発走・走行ができるか、一定の距離を定められた時間設定の範囲内で走る能力があるかも確認される。
一定の期間は出走経験のない競走馬のみが出走することのできる競走(新馬戦)が主催者によって用意されるが、日本以外では新馬戦という競走ではなく未勝利戦と呼ばれる未勝利馬による競走が一般的である。
競走生活は一般的に5歳前後まで続く。
なお、競走を重ねるにつれて、個々の競走馬の能力や適性が次第に明らかになる。

競走馬登録・入厩

競走馬として登録され、デビューに備えて管理にあたる調教師の厩舎(トレーニングセンター)に預けられる。

入厩の時期は一般に2歳の春から夏にかけてである。なお、競走に出走するまでに競走馬名が決定する(それ以前は幼名を用いたりする)。

馬主による購入

走馬用のウマは当初は生産者が所有するが、やがて馬主によって購入される。一般的な時期は生まれた直後から2歳にかけてである。購入方法は競り市(セール)による場合と、生産者と馬主の直接取引(庭先取引という)による場合とがある。馬によっては引き続き生産者自身が馬主となり、競走に出走させる場合もある。購入に関しては馬主や生産者と関係が深い調教師や家畜商が仲介したり斡旋したりする場合も多い。

また、日本においてはあまり一般的ではないが、ピンフッカー(Pinhooker)やコンサイナー(Consigner)と呼ばれる業者が介在する場合もある。ピンフッカーは0歳ないし1歳馬を購入して育成や調教を加えて市場価値を高め、2歳時に高値で転売することを目的とする。コンサイナーは生産牧場から馬を預かって育成・調教、さらには宣伝を行って高値で売却されるよう活動する。

日本中央競馬会JRA)には、かつては生産者から自らが購入し、育成した後に抽選で馬主に販売する、という抽せん馬の制度もあった。現在は法改正に基づきこれを改める形で、購入して自ら育成した後に競り市で販売するという制度を行っており、ピンフッカー的なものに移行しているといえる。

育成

厩舎に入る前の仔馬に対し、競走馬としてのトレーニングを積ませることを育成という。狭義の育成は1歳後半から2歳の前半にかけて育成牧場で行われる騎乗馴致、騎乗訓練、調教(後期育成)を指す。

広義の育成は誕生から離乳までの間にある仔馬に対して人とのスキンシップに慣れさせるプロセス(初期育成)と、当歳の終わりから1歳の後半にかけて行われる人とのスキンシップに慣れさせつつ行われる初期の騎乗馴致(中期育成)を含む。
中期育成の段階で昼夜放牧やセリ馴致(駐立や挙肢などセリ市での望ましい振る舞いを仔馬に覚えさせる)が

1960年代以前は一部の大規模な生産牧場を除き、生産牧場は文字通り生産のみを行い、競走馬は厩舎で馴致・育成・調教が施されていた。

1970年代入ると馬産地や中央競馬レーニングセンター周辺にある育成牧場で馴致・育成が行われた後で厩舎へ送られる競走馬が増加していった。

1980年代に入ると生産牧場から直接厩舎へ競走馬が送られることはなくなり、全ての競走馬が育成牧場を経由するようになった。

また、中央競馬所属の一部の競走馬については馬産地の育成牧場とトレーニングセンター周辺の育成牧場との間での役割分担が成立し、生産牧場→馬産地の育成牧場→トレーニングセンター周辺の育成牧場→厩舎というプロセスで馴致・育成・調教が行われるようになった。
このプロセスは1990年代以降、日本の競馬界における一般的な馴致・育成・調教のプロセスとなった。